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国際バカロレア (IB)取得と大学進学

国際バカロレア (IB)取得と大学進学

体験者プロフィール

小谷 みなみ Minami Kotani

2017年国際バカロレア取得
Lyceum Alpinum Zuoz 卒業
University College London 卒業

1. はじめに

2017年7月に国際バカロレア(通称IB)を取得しました。
記憶も新鮮なうちに体験記らしきものを以下に綴ります。

海外では日本と異なり、高校を出たからといって直ちに「大学入学の資格」が付与されるわけではない。国際バカロレアもその資格のひとつである。私が通っていたスイス南部の LAZ(Lyceum Alpinum Zuoz)は国際バカロレア以外にもマトゥーラというドイツ語のカリキュラムもあった。

日本の高校カリキュラムや大学受験は経験していないので比較することは出来ないが、友人の話や参考図書から推察するに、以下のような違いがある。

考える力を重視(暗記、計算はそれほど重要ではない)

言語、社会科学などの試験は基本的に作文であり、自然科学でも違うトピックのつながりを重視するような問題がでる。満点を取るためには最終的な答えだけでなく途中式もちゃんと合っていなければいけない。その反面、暗記事項は少ない。公式やデータなどが載っている冊子は試験前に配布されるし、試験によっては電卓の利用も可能。

試験一発型ではない

後述するように最終的な評価は試験だけでなく事前に提出した課題の評価も含まれる。最終評価は試験結果だけではなく他のスキルも考慮されている。

勉強以外の活動も必要

国際バカロレアの資格には選択した教科の他にも課題論文や課外活動など、机に向かう勉強以外のこともする必要がある。

2. 国際バカロレアの仕組み

大学入試を視野に入れた二年間のプログラム(日本でいう高校二年生の9月から翌々年の五月の試験まで)
選択教科にもよるが学術的な英語(Academic English)を求められ当然授業も全部英語なので最低でも事前に一年間は留学しておくことをおすすめしたい。

6つの教科が各7段階評価、あと他の課題で最大3点が入る→45点満点

評価の方法は、五月の試験の結果(External Assessment)と事前に提出した課題(Internal Assessment)の評価の総合評価である。基本試験結果が80%、課題は20%である。
最終得点が24点以上、加えて課題論文、知の理論、課外活動を完了した生徒にのみ国際バカロレアが付与される。しかし、この基準を満たさずとも各教科ごとに修了書が発行されるので進学にはそれも利用できる。

教科は6つのグループに分けられている

各教科にはスタンダードレベル(SL)とハイレベル(HL)があり、その名の通りハイレベルを選択するとよりたくさんの事柄を学習する必要がある。最低でも3教科でハイレベルを取ることが必要。

Group 1:Studies in Language and Literature

いわゆる「A Language」。得意な言語で文学や実生活における言語の使われ方などを学習する。日本語を取ることも可能だが、(自信があれば)英語を選択することもできる。しかし日本語を取る場合、スイスの学校には日本語の先生がいないので自習(Self Taught)という形になる。自習と言っても完全に丸投げされる訳ではなく、課題提出や試験監督は現地の先生。日本語の先生とはスカイプやメールでやりとりをしてカリキュラムを進めていく。現地の先生が監督してくれるとはいえ、自主性が重要になってくるので、選択するときは自分に厳しく!(管理が緩めなことにつけ込んでダラダラしてた結果最後にしわ寄せが来て大変なことになってた生徒達が私の周りにもちらほら。。。)

英語には2種類ある。

  • English A Language and Literature(言語と文学)
  • English A Literature(文学)

Language and Literature の方は文学と新聞や広告など世間で使われている言葉などをメインに学習する。

Literature は文学のみの学習。詩も学習する。こう書くと Language and Literature の方が大変そうだが Literature の方が一般的には大変である。そのため、Literature のクラスは比較的小さく、真面目な生徒が多い。あと Literature の方が大学からの評価も高い。

Group 2:Language Acquisition

いわゆる「B Language」。第一外国語であり、Group1で日本語を選択した場合英語(English B)を選択しなければいけない。私は選択していないが、English B は割合簡単らしい。
このセクションでは「ab initio」と呼ばれる初心者向けの言語を選択することもできる。それこそ数の言い方レベルからである。ab initio はスタンダードレベルのみである。

Group 3:Individuals and Societies

社会科学。歴史、経済、ビジネスなど。カリキュラムは日本とだいぶ違う。

Group 4:Experimental Sciences

自然科学。物理学、化学、生物など。こちらも、カリキュラムは日本とだいぶ違う。

Group 5:Mathematics

数学。これは3つのレベルに分かれている(ハイレベル、スタンダードレベル、スタディーズ)。どのレベルを取る必要があるかは大学で何を勉強したいかによる。

Group 6:The Arts

芸術。音楽、美術など。美術史や音楽史を学ぶ必要はなく、自分のアイデアを作品を通じて表現する事が重要。

以上の教科グループから一つずつ選択する必要がある。ただし、Group 3または Group4から2教科選択した場合、Group6は選択しなくてよい。

3. 国際バカロレア — 教科以外 —

国際バカロレアはこれら教科以外にもやることがある。

Creativity, Activity, Service(CAS)

課外活動。ボランティア活動やチャリティー、自分にとって新しいことにチャレンジする、など。国際バカロレア開始から最低でも18ヶ月間継続して活動する必要があり、合計で150時間はCASに充てる必要がある。これは一週間に大体3〜4時間である。
国際バカロレアの規定は150時間だが、時間の数え方は学校による。私が通っていたLAZでは、18ヶ月で12個の企画を終わらせる、というものだった。
企画をするときには活動のレポートを書く。そして、完了したら事前に約束したスーパーバイザー(先生、友人など)に完了のサインをしてもらう。
国際バカロレアが最終的に見るのはレポートのみで、実際にCASを完了したかどうかはCAS担当の先生が決める。

企画とは具体的に何をすればいいのか

CAS の企画はCreativity、Activity、Service の要素(うち一つでもいい)を含んでいる必要がある。

Creativity創造性。「教室に飾る用の絵を書く」「ギターを習って、簡単な曲を弾けるようになる」など
Activity活動。「地域の行事に参加する」「ダンスクラブに参加してコンテストに出る」など
Service奉仕。「隣に住むおばあさんのために料理する」「夏季ボランティアに参加する」など

もっとシンプルな物でもいい。私がやったなかで一番くだらないのは「毛糸のポンポンでおもちゃを作る」という30分ぐらいで終わった物だが一企画としてカウントされた。
国際バカロレアでは地域のコミュニティと交流するような活動が評価されるが、こういった交流できるようなイベントは学校側がきちんと企画してくれているので安心だ。

作戦:国際バカロレア1年生で全部終わらせる!

私は12個の企画のうち11個を国際バカロレア1年生で終わらせ、最後の一つを国際バカロレア2年生でのんびり終わらせた(一応二年間継続して活動するということなので)。国際バカロレア2年生になると internal assessment やら5月の試験やらで慌ただしいのでCASなんてやってられない。比較的余裕のある国際バカロレア1年生中に済ませましょう。夏休みなどの長期休暇も時間を稼ぐチャンス。(後回しにしているとこれまた大変なことに。。)

欲を言うならば一つすごくちゃんとしたものをやってあとは小さい事で埋める、というのがいい。私は「ポストカードを作ってチャリティーとして販売、収益はストリートチルドレン援助団体に寄付する」という活動をし、合計1000スイスフラン以上売り上げた。学校内でのコンテストでも優勝した賞金を合わせ、最終的には3000スイスフラン超を寄付した。私の企画といえばこれ以外はクッキーを焼くだの刺繍するだの些細なことばかりで埋めたがひとつでしっかり活動したので文句は言われなかった。一つでもちゃんとしたものがあれば大学へのアピールもできるし一石二鳥。個人的にこれはおすすめする。

Extended Essay(EE)

課題論文。教科もトピックも自由。全て英語で最大4000語の論文を書き上げる必要がある。フォーマットも公式な論文の書き方に沿っていなければいけない。生徒自らが先生の元に行き担当になってもらえるよう頼む。例えば、私は化学の課題論文を書いたので化学の先生に頼んだ。トピックもリサーチも、先生はあくまで補助なので自ら率先して行わないといけない。

作戦:とにかく早く始めよう!

国際バカロレア入ったらすぐにでも担当の先生を決めよう。一人の先生は3人までしか生徒を持てないので、人気の先生はすぐに埋まってしまう可能性がある。国際バカロレア1年生以前からその学校で勉強しているならば指導がちゃんとしている先生を見分けられるのでおすすめである。教科もトピックも手早く決めて早めに始めよう。

教科は自分の好きなものを!大学で学びたい教科が決まっているならそれにしよう。大学へのアピールにできる。課題論文は本当に時間がかかるので取り組んでて苦にならないような、好きな教科とトピックが望ましい。楽しいとツラくないしいい論文が書けるしね。

理系教科ならとにかく早く行動に移そう。化学、物理などの教科は実験をして結果も論文でまとめるというのが評価が高くなりやすい。実験をするには時間がかかるので早く計画を立ててアクションを起こそう。私の実験は20時間以上かかり、一週間のうち5時間ほどしか取れなかったので4週間ほど論文自体に進展がない、という時期があった。私は早めに始めていたので問題にならなかったが、時間が足りなくなって提出期限を大きく超えてしまった生徒も多かった。

私が通っていた LAZ では、国際バカロレア2年生の10月ごろに1週間集中して課題論文を終わらせる期間があり、その最終日が提出期限だった。国際バカロレアの実際の期限は翌年3月ごろだが、フォーマットの確認や担当の先生からの評価など事務的な事も多いので早めに設定されていた。国際バカロレアの提出期限は一日でも越えると国際バカロレアの資格が取れなくなる文字通りdead lineなので後回しにしないようにしよう。

Theory of Knowledge(ToK)

知の理論。物事をどのように知るのか、どう認識するのかなどの哲学。認知科学のようなものだというと分かりやすい。課題としては1600語以内のエッセイ(トピックは6つのうちから選ぶ)と自分で決めたトピックに関してのプレゼンテーション(10分)。
プレゼンテーション 自分の体験や読んだ記事などから質問を発想して、その質問に答える、というもの。国際バカロレア2年生になってから開始される。
エッセイ 国際バカロレア2年生の9月1日に発表されるお題6つの中から1つ選んで1600語のエッセイを書く。
書いてある通り実際に課題に取り組むのは国際バカロレア2年生からであり、国際バカロレア1年生のクラスでは知の理論とは何か知るためのディスカッションが多い。

作戦:国際バカロレア2年生から本気出すべし!

哲学なので向き不向きがあり、説明しがたいのがこの教科である。しっくりくる子は国際バカロレア1年生のときからクラスのディスカッションにも積極的に参加できたり理論が腑に落ちたりととても楽しそうだった。しかし私は(頭がカタいので)国際バカロレア1年生では全くつかめず授業を聞くだけパニックに陥っていたので潔く(?)内職していた。

しかし、国際バカロレア2年生になりゴールがはっきりした途端きちんと取り組めるようになり、エッセイもプレゼンテーションも成功した。だからわからなかったら国際バカロレア2年生から本気出そう。これで間に合う。わからなくても大丈夫。でもわかるんだったら国際バカロレア1年生からちゃんとやろう。

CASにおいてはやったかやってないかしか評価されないが、EE とToKはAからEで評価がつき、その成績により最大3点が入る。(以下のマトリックスで算出)

Eについて:よほどひどくないと取れない成績なので普通にやってればまずありえない。

私の最終的な結果はToK、EEともにCで一点が入った。
この二つは作文な上に評価が(本来あってはいけないが)試験官によってだいぶ変わってしまうので学校の先生からの予想と外れることも多い。

ちなみに最終的な結果が出てから、選んだ教科の再採点を依頼することもできる。これで成績が変動することもある。

4. 教科選択について

国際バカロレアが始まる前(日本では高2の夏休み前)に選ぶ。学校によっては初めの一週間は全部の教科に参加できて、そこから選択というシステムもある。
早い段階なら教科を変更することもできる。が、それまでのカリキュラムは基本自習しないといけないので、早めに決めた方がいい。
ハイレベルだった教科を途中でスタンダードレベルに落とすというのもできる。
大学で何を勉強するかによってどの教科を取るか、またどの教科をハイレベルにするかも変わってくる。

例えば大学で化学を勉強したいなら

化学、もう一つの自然科学、数学 SL 以上

経済なら
経済、もう一つの社会科学、数学 SL 以上
これは一例であり、同じ学部でも要求は大学によってまちまち。

数学に関しては
数学、物理、工学などなら基本ハイレベルが必須。
化学、生物、心理学などならスタンダードレベルでも可能な大学も多い。

文系科目、たとえは法律や歴史などならスタディーズという一番簡単なものでも大丈夫。むしろ必要ないのならスタディーズにした方が簡単だし点が取りやすいので賢い選択である。
もちろん教科を選んでから、取っている教科でいけそうな学部を探すというのも問題ない(むしろこっちの方が多数。)
行きたい大学や学部がはっきりしているなら事前に調べて教科選択のターゲットを絞ることが大切。

以下は私が実際に取った教科の解説です。

Group 1:English A Literature SL

English A はネイティブスピーカーむけに作られているので、難易度は高い。一年間に読む本の数は、スタンダードレベルで11冊、ハイレベルで13冊。これは国際バカロレアで定められている数であり、学校によってはスタンダードレベルでも13冊全て履修させるという方針もある。

試験はスタンダードレベル、ハイレベルに関わらず二つで、試験問題はどちらも大差無い。ただ、ハイレベルの方が厳しく採点される。

Paper 1
与えられた小説の一節、または詩のどちらかを選び、評論文を書く。スタンダードレベルなら二つの質問が与えられており、それらに答えれば大きく外れたことを言ってしまうことは無い。ハイレベルとスタンダードレベルとでは小説も詩も違う物が与えられる。長さは小説ならだいたいA4ちょうどぐらい、詩なら30行ほど。制限時間は1時間半で満点は20点。(ハイレベルなら2時間で20点)

Paper 2
エッセイのお題が3つ与えられる。一つ選び、事前に読んだ3冊の本(ハイレベルなら4冊)のうち最低でも2冊を使いそのエッセイを書き上げる。制限時間は1時間半で満点は20点。(ハイレベルなら2時間で25点)

私の最終的な結果は5だった。当初から目標にしていた成績だった。

Group 2:German ab initio SL

ドイツ語の初歩レベル。基本的な読み書きのみ。

課題(Internal Assessment)
350語の作文。自分の文化(日本人の場合日本文化)とドイツ語圏の文化を比較するようなトピックを自分で決める。私は「日本とドイツの朝食の違い」について書いた。

試験(External Assessment)

Paper 1
実際の短い広告や新聞記事などを読んで質問に答える。質問は穴埋め、リストの中から合うものを選ぶ、「彼」とは誰のことですか、などと多岐にわたるがシンプルなものが多い。

Paper 2
作文。お題にそって二つの作文を書く。どちらも最低150文字と短い。お題とは例えば「あなたは小学校の同窓会に参加し、昔のクラスメイトに再会してとても楽しい一日をすごしました。このことを日記に書きなさい。」「あなたは3ヶ月間ドイツに留学しました。この経験を学校の新聞に投稿することにしました。新聞記事を書きなさい。」など。適当に想像して書こう。

オススメの勉強法
練習あるのみ。しかし Paper 2 は、お題のあとに短いリストがあり、それらの要素を含めれば点は取れる。
(リストの例:・パーティーで誰に会ったか・何を食べたか・どこでパーティーがあったのか、など)

私の結果は6だった。

Group 3:Economics HL

経済。

課題(Internal Assessment)
新聞やニュースサイトから記事を選び、それの評論文を書く。750語がリミット。これを3つ書く必要がある。

  • 1つ目 マクロ経済学(macro economics)
  • 2つ目 国際経済学(international)
  • 3つ目 国の発展(development)かミクロ経済学(micro economics)

記事のなかで何が起こっているかをまとめ、図とその説明、それに関する自分の意見などを書く。

試験(External Assessment)

  • Paper 1 エッセイ問題。Section A, Bとあり、各セクションにつき1つ選択して答える。
  • Paper 2 新聞記事を読んで質問に答える。4題出題されるがそのうち2つを答える。
  • Paper 3 これはハイレベルのみ。計算問題と短い説明問題。例えば、表を元にGDPを計算するなど。

オススメの勉強法
暗記。定義、図、理論の仮定や説明など全部暗記したほうがいい。エッセイのお題も聞かれる質問もある程度パターン化されているので練習が鍵。どんな回答もまずは関係性のある経済用語の定義から始めること。例えば、「ある商品の価格の変化がどのように資源を分配するか、説明しなさい」なら「価格」や「資源」などの定義で始めればいい。

Paper 3 では公式は与えられないので暗記が必要。これも練習に限る。「million doller」などの単位にも注目。説明問題では教科書に乗ってる説明や理由などがそのまま答えな問題が多いのでここでも暗記。
経済は本当に暗記科目。板書は全て覚えてしまおう。言い方を変えれば暗記すればどうにでもなる。

私の結果は5だった。あと1点で6だった。。。

Group 4:Chemistry HL

課題(Internal Assessment)
自分で決めたトピックでのレポート。実験は必須ではないがやったほうが高評価になる。実験のデータをグラフ化したり誤差の処理をしたりなどが評価につながる。自分がなぜこのトピックに興味を持ち、選んだのかを含める。文字制限はないがページ数の上限は12ページ。(長すぎても余白を小さくしたりフォントを変えたりして12ページに収めればいい)
先生は手伝ってくれるが規則により一度しか見てもらえない。しっかり聞いて修正しよう。

試験(External Assessment)

Paper 1
四択問題40問(40点満点)。時間制限は60分。(スタンダードレベルだと30問を45分)事前に配られるのは元素周期表のみ。

Paper 2
計算問題や記述問題。90点満点で制限時間は2時間15分。(スタンダードレベルだと30問を45分)あらかじめ公式の載った冊子が配布され、電卓も使用可能。

Paper 3
実験データをプロセスする問題と、自由に選択できるトピックの問題。45点満点で制限時間は1時間15分。(スタンダードレベルだと30問を45分)あらかじめ公式の載った冊子が配布され、電卓も使用可能。

オススメの勉強法

Paper 1
時間制限がかなり厳しいので、たくさんの過去問を解いて形式に慣れるのがいい。基本的な理論に基づいたものなども多いので、基礎をしっかりと固めておくことが大切。暗記してれば一瞬でわかるような問題もあるので、授業中に先生が覚えろといった物はきちんと覚えておこう。(例、アルコールの融点を順に並べる、エントロピーとエンタルピー、ギブス自由エネルギーの関係、など)。四択中最低でも1問ははっきり間違いだとわかるので消去法も活用しよう。

Paper 2
時間に余裕があるので落ち着いて考え、記述問題はしっかりすべての要素をカバーするように書こう。(余談だが私の先生曰く「記述問題では、試験官がどうしようもないバカだと思って書きなさい」)計算問題では途中式も明記すること。本当にわからなかったら公式だけでも写して書いておく。これでもたまに点が入る。あと、公式の載った冊子は分厚くて慣れていないと目的の情報が引き出せないことが多々あるので、過去問を解くときに使って慣れるようにしよう。どんな情報が載っているか把握するのも大切。(その冊子は、年度によってフォーマットに微妙な違いがあるので、使って練習するときは年度をよく確認しよう。)

Paper 3
こちらも時間に余裕がある。実験データの問題には、誤差を計算する問題が必ず出るので要チェック。グラフを書くときにはちゃんとすべての点に線が通るように引こう。x軸y軸も確認する。単位が抜けて無いかなど。

私の結果は7だった。

Group 4:Physics HL

課題(Internal Assessment)
化学と同じ。

試験(External Assessment)

Paper 1
形式はchemistryと同じである。だが、すべての試験で全ての公式が載った冊子が利用可能。paper1 のみ電卓が使えない。

Paper 2
chemistryと同じ。

Paper3
chemistryと同じ。

オススメの勉強法

Paper 1
私が苦手だったこともあってか個人的にこのpaper1が一番の鬼門だった。数値ではなくシンボル(距離がs、時間がtなど)を扱う問題がほとんどなので慣れておこう。これも過去問をたくさん解くのが効果的。特に、惑星が軌道に乗っているときの運動エネルギーと位置エネルギーの関係性のグラフは絶対に一問は出るので要チェック。とにかく時間がギリギリなので手早く、でも冷静に。本当に落ち着いて解いて!

Paper 2
これは時間に余裕がある。基本chemistryと同じだが、ハイレベルになると複数のトピックの知識を応用するような問題が出るので基本を固めてあとは練習。

Paper 3
化学と同じ。

私の結果は6だった。

Group 5:Math SL

課題(Internal Assessment
化学と同じだが、数学においては自分自身の興味をうまくレポート中で表現するのが難しい。それもうまく視野に入れたトピックを選ぶべき。

試験(External Assessment)

Paper 1
電卓なしの試験。公式の載った冊子は使える。90分で90点満点。

Paper 2
電卓あり。90分で90点満点。

オススメの勉強法

Paper 1
練習。三角関数の問題では、それぞれの0度、30度、45度、60度、90度の変換を暗記すること。radianにも慣れるようにする。あとは、冊子をきちんと把握する。

Paper 2
電卓の使い方に慣れよう。特に、グラフを表示させて解く問題などは手間取ると時間の無駄になってしまう。電卓でグラフを表示して解いた場合は、途中式用の余白に簡単なスケッチをすること。途中式とみなされて点数が入る。

私の結果は6だった。

5. 大学受験について

イギリスの大学への受験は基本UCASというウェブサイトを通じて行われる。アカウント作成やパスワード設定などは学校がやってくれる。

国際バカロレア2年生の10月ごろ、志望の大学や学部を決める。先生と相談して、今の成績や活動をみて決める。UCASでは、最大で5校しか願書を出せないので絞る。基本大学のウェブサイトには、入学に必要な国際バカロレアの成績が明記されているので、それを参考にする。UCASの願書締め切りは国際バカロレア2年生の1月15日である。

次に、Personal statement という4000文字の自己紹介文を書く。それと、先生からの生徒に対する評価と10月時点の成績で5月の試験で取れると思われる成績を大学に送る。
願書が通れば大学からconditional offerがもらえる。これは、大学側が提示した条件を満たせば入学を認めるというもので、例えば「physics HL, chemistry HLで6以上、合計点が35点以上」など。ここまででだいたい1月。
五月の試験でconditionを満たせば晴れて合格。(試験結果の発表は7月5日)

ケンブリッジ大学、オックスフォード大学は応募する生徒が桁違いに多いので願書締め切りは10月15日。そこから面接や大学が指定した試験などが入ってくる。チャレンジしたいなら国際バカロレア1年生からの考慮が必要。

アメリカについて

私はアメリカの大学に一つも出願していないので、詳しい事は分からないが、ざっと以下のような違いがある。

  • 先生の評価の文が長い。イギリスの場合は複数の先生の意見を一人の先生(基本進路相談の先生)がまとめるというもの(4000文字)。しかしアメリカの場合は複数の先生が1ページ分ほどの推薦を書く。
  • 予想成績だけで合格する事もある。personal statement、先生の推薦、予想成績、またはその他の課外活動などが評価されればいきなり合格ということである。この場合、五月の試験でちゃんとdeplomaが取れていれば(24点以上なら)ほぼ無条件で合格。
  • アメリカの大学はよりチャレンジ精神を見る。イギリスの大学が学術的な興味や国際バカロレアの成績を重視しているのに対し、アメリカの大学は多少成績が悪くとも難しい教科を取っていたり、クラブ活動に積極的に参加していたり、課外活動を多くこなしていたりなどといった勉強以外の部分をしっかり見る。

ほかのEU内の大学に進学する場合

国によっては国際バカロレア以外の試験や推薦などが必要になるので注意しよう。視野に入れるなら早めに決めて対策を打つこと。スイスの大学はArtを含めたGroup6の教科やExtended Essay, Theory of Knowledge で得られるエクストラポイントを考慮しないような大学もあるので気をつけよう。

Gap Yearについて

国際バカロレア2年生の間に大学に出願せず、一年後に(5月の試験結果が出てから)出願するということ。一年空くのでGap Yearと呼ばれる。利点は、試験の結果が出てから出願できる。あとは、イギリスの大学では入学してすぐいきなり専門分野に絞って学習を進めていくので、自分が本当に大学で学びたいことを探す、というのも理由にある。「入るのは(比較的)簡単だが出るのが難しい」というのは本当のことなので学部は慎重に選ぼう。その一年間を使って海外の長期ボランティアに参加したりインターンシップに参加したりする生徒もいる。あとは、5月の試験結果が不本意に終わったときに11月に再受験するという生徒や、国際バカロレア2年生中に大学のことをするような時間がなかった、という生徒も。Gap yearの使い方は本当に自由なので自分に合った計画を立てよう。

進路

進路指導の先生と相談して決める。学校によると思うが、私が通っていたLAZでは国際バカロレア1年生の後期(12月、1月)に初めの相談があった。あとの進捗は生徒次第な部分が多い。やりたいことがはっきりしているなら成績を見たり大学を絞り込んだりPersonal Statementの草案を作ったりなどをすぐに開始する。決まっていない場合も、国際バカロレア2年生の10月ぐらいまでなら猶予があるのでよく考えよう。
スイスの学校からの進路はやはりイギリスやその他ヨーロッパの大学が多い。私の学校でもアメリカに進学する生徒は少数だった。

Tutorとは

国際バカロレアが始まるとまず初めにTutorとなる先生を決める。これは進路相談の先生とは違い、生徒の生活全てをサポートしてくれる先生だ。今するべきことや課題の進捗、学校や寮での問題点などについて話し合う。会う頻度は人によって違い、本格的にサポートが必要な生徒は週に一度、特に問題もなく自分でできるという生徒はほとんど会わないなんてこともある。国際バカロレア1年生以前からその学校にいるなら、前の学年の最後にTutorを希望する先生を何人か選び、そのリストに従って決まる。ちなみに生徒が遅刻したり無断欠席したり飲酒で捕まったりすると一番初めにTutorの先生に連絡が行く。

6. スイスで国際バカロレアを学ぶことについて

スイスのインターナショナルスクールの多くは国際バカロレアの認定を受けている。他の国と比べて、スイスは国際性に富んでいるため、インターナショナルスクール内でも一定の国籍だけ多すぎるということは少ない。

スイスは公用語が4つ(ドイツ語、イタリア語、フランス語、ロマンシュ語)があるので第二外国語を学ぶことができるのも特徴的だ。(学校によっては国際バカロレア以前の学年では必修なこともある。私のように国際バカロレアでドイツ語を選択する予定があるなら有利。)

また、難易度が高いと言われている国際バカロレアだが、スイスの学校は小規模なところが多いので、生徒一人ひとりをきちんとサポートしてくれる。

他の大学入学資格と比較して

有名なものに A-Level というものがある。これは主にイギリスで実施されているが、スイスにあるブリティッシュスクールでも受けることができる。大きな違いは、3〜5教科だけでも資格を取れることで、その分踏み込んだ内容を学習する。国際バカロレアのように教科のグループがなく、好きな教科を自由に取れるので、大学で何を学びたいかはっきりしているなら A-Level の方がいい。しかし、より幅広い知識を包括的に学習できるのは国際バカロレアだし、いろいろな種類の教科を学ばなくてはいけない分、今まで着目しなかったつながりに気づくことが出来たりする。

また、A-Level では国際バカロレアで必須の Extended Essay、CAS、Theory of Knowledge などがない。自己管理能力が身につくので大学に入ってからの学業で有利だ。事実、国際バカロレアをこなした生徒のほうが大学の落第率が低い。Extended Essay では好きなトピックについて深く掘り下げることができるので、大学に自分の興味をアピールすることができる。

以上、参考になれば幸いです。
こうして書いてみると、何かすごく難しいことをやっているように見えますが、実際には先生や他の生徒たちがちゃんとサポートしてくれるので安心です。

私は現在University College Londonに入学し、化学を専攻しています。スイスの高校で真剣にまなび国際バカロレアを取得して本当に良かったと日々感じています。

これから進学を考える中学生の人たちやその保護者の方に、ひとつの選択肢として国際バカロレア取得を検討頂きたいと心から思います。後輩が増えることを楽しみにしています!

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