株式会社FESスイス留学センター
現在スイスで留学されるご家庭のサポートを担当しております、伊藤です。
我が家は子供が4人。
長女 高校生
長男 中学生
次男 小学生
次女 幼稚園生
今回は、スイスの公立中学校に通う長男のお話です。
世界のどこにいても、中学時代は心身ともに大きく変化し、急に大人になるスピードがグッと上がるような…、ドラマチックな時間だと感じる場面がたくさんありますね。
子どもたちは、それぞれ自分のペースで自分の世界を見つけているんだなと思いながらも、つい感情のローラーコースターに一緒に乗ってしまっているような日々を送っています。
さてスイスに引っ越してきてから発見し、感動したことのひとつが、中学校での時間の過ごし方です。
スイスの公立中学校では、定期的に「職場体験」がカリキュラムに組み込まれているのです。
これはただの見学ではなく、実際の職場に数日間入り込み、仕事を“体験”する本格的なインターンシップ。
しかもこの取り組み、進路選択をサポートする目的で中学2、3年生(13〜15歳頃)を中心に、カントン(州)によっては数回に分けて実施されます。
学校と家庭、そして地域が連携して、子どもたちに社会との接点を作っていく。
「机の上の学び」だけではなく、学校を飛び出して “働くこと” や “社会との関わり” を肌で感じる時間が、こんなにも自然に教育の中に溶け込んでいることに感動しました。
中学校の授業の一環として、履歴書の書き方を学ぶ時間が設けられています。
そして驚くのが、職場体験の「職場」も、生徒たちが自分で探すという点です。
放課後や週末の時間を使って、気になる職場をリサーチします。
実際に申し込みに行く際は、事前に電話をしてから訪れる生徒もいれば、「履歴書を片手に一か八かで飛び込んでみる!」という子もいます。
どの子もそれぞれに考え、決めて、行動する。
さて、そんな彼らが実際にどんな場所で職場体験をしているのでしょう。
A君は今回は矯正歯科での職場体験。ちなみに前回は日本食レストランでした。
Bさんは前回も今回も一貫して介護施設。
Cさんは今回は美容室、前回は役所。
D君は、今回はオーガニック食品店、前回はウィンドサーフィンの学校。
そして我が家の長男はというと、今回の職場体験はマウンテンバイク一色です。
彼なりに工夫をしたようで、5日間のうち2日間はスポーツショップで整備を学び、残りの3日間は、マウンテンバイク用のトレイル(コース)を整備・造成する会社で職場体験をすることにしました。コースの維持管理だけでなく、新たに地形を整えて道を作るといった作業にも携わります。
ちなみに前回の職場体験はホテル。ベッドシーツの取り替えがプロ並みに早くなって帰ってきました!この職場体験という機会を通して、親としても子どもの成長を感じられるのがとても印象的です。
前回の職場体験では、息子は「どこで働けばいいのかわからない…」という状態で、正直あまりピンときていない様子でした。結局、家の近所という理由でホテルを選んだのですが、それも「なんとなく」だったように思います。
それが、今回の職場体験ではガラッと変わりました。自分が何に興味があるのか、どんなことを実際にやってみたいのかがはっきりしていて、なんと自分から希望の職場を2か所も探して依頼し、体験をさせてもらうことに。
行動にも、話す言葉にも、しっかりと「自分の意思」が見えてきて、頼もしくなったなと感じました。
「将来、どんな仕事をしたい?」
そんな問いに、即答できる中学生は多くないように思います。
自分が好きなことや、あまり好きではないことが少しずつ分かってくるだけでも、将来の進路をより具体的に思い描けるようになるのだと思います。
子どもたちが実際の職場に足を運び、自分の目で見て、体を動かし、人と関わることで得る経験は、教室の中だけでは決して得られない、かけがえのない学びです。
スイスの教育に組み込まれている職場体験の仕組みは、まさに「学校を飛び出して」学ぶことの大切さを体現しています。
子どもたちがリアルな社会に触れることで、自分の興味や可能性に気づき、将来の進路を主体的に考えるきっかけとなる。そんな貴重な学びの場であることを、強く実感しています。
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