株式会社FESスイス留学センター
現在スイスで留学されるご家庭のサポートを担当しております、伊藤です。
前回の記事では、スイスの公立中学校における「職業体験」についてご紹介しました。
今回は、その中学校卒業後の進路についてのお話です。
日本では、義務教育である中学校を卒業すると、多くの生徒が高校へ進学しますね。
一方、スイスでは、約7割の生徒が日本とは少し異なる進路を選びます。
10人中7人が進むその道とは・・・ いったいどのような選択肢なのでしょうか。
それが、「職業教育訓練(VET: Vocational Education and Training)」です。
VETとは、企業で実際に働きながら職業スキルを身につけると同時に、学校でも専門的な知識を学べる教育制度です。
「デュアルシステム(二重構造の教育)」とも呼ばれ、実践と学問をバランスよく両立できるのが大きな特徴です。
「働きながら学び、学びながら働く」ことで、実践力と学問を無理なく身につけられ、社会に出てから即戦力として活躍できる人材を育てる、とても効率的で現実的な教育システムです。ここで少し我が家の長女についてお話しします。
彼女は東京で生まれ、幼児期をニュージーランドで過ごしました。
小学校中学年から中学校の途中まではフランスで学び、その後はタイに移り、2年間インターナショナルスクールに通いました。当初はフランスのカリキュラムで学習を始めましたが、途中でイギリスのカリキュラムに移行し、最終的には IGCSE を受験しました。
スイスに引っ越してきた時点で、彼女は高校1年生にあたる年齢でした。
職業教育訓練の道に進むのか、それとも大学進学を目指す道に進むのか、じっくり選ぶ時間がないまま、これまでの成績や学習歴をもとに「進学コースにしましょう」という流れに自然と乗る形となりました。
今までの経緯もあり、今回はスイスのカリキュラムで落ち着いて学べる環境を整えてあげたいという思いもありの選択でした。
転入にあたっては、事前に学校側が学校見学を手配してくださり、夫と私、そして娘の3人で学校を見学させていただきました。
中学・高校時代をコレージュ・アルパン・インターナショナル・ボー・ソレイユ(Collège Alpin International Beau Soleil)で過ごした夫も、自分の学生時代を思い出しながら、広々とした開放的な校内の雰囲気や、充実した施設の数々に感心している様子でした。
彼女の通う高校はレマン湖のほとりにあります。ランチの時間には湖の絶景を眺めながらお弁当を食べてお喋りし、泳いだりする日もあるようで… 学業の合間もスイス生活を存分に満喫しているようです。さて、スイスの中学生7割が選ぶ 職業教育訓練(VET)。中世の徒弟制度に始まり、産業化とともに公的制度化され、20世紀後半にはデュアルシステムとして定着しました。そして21世紀に入ってからは、柔軟性・実践性・高品質を兼ね備えた制度として国際的にも注目されています。
娘のお友達も中学校を卒業後、職業教育訓練(VET)を選びました。電気技術分野で実務訓練を受けている子は「今日も仕事に行く」と表現します。まさにその通りで、若者とはいえ、企業でしっかり働きながら訓練を受けているため、その仕事内容も雰囲気も立派な「仕事」です。また、この職業訓練ではお給料が支払われます。フルタイム労働者よりは低いですが、教育を受けながら収入を得られるという点で若者にとって早期の経済的自立とキャリア形成の両立が可能になるのです。そして、職業教育訓練(VET)の後には、国際インターンシッププログラムという選択肢もあります。スイス州政府も支援するこの国際的なキャリア形成プログラムでは、なんと日本でもインターンシップが可能なのです!
世界のどこに行っても「日本が大好き!」「行ってみたい!」「住んでみたい!」という声をよく聞きます。私の周りでも将来、日本でのインターンシップを視野に、日々の実務訓練を積んでいる子を何人も知っています。
「将来どうしよう…」と途方に暮れがちな年齢の若者たちにとって、次のステップが見えやすい職業教育訓練プログラムは、大きな希望と可能性をもたらしています。→ NextStep Program
関連記事